あたたかい場所

私は、以前も自分のサイトを持っていました。
でも、諸事情があって、サイトを閉鎖しました。

この場所を始めたとき、
以前のサイトをご存じだったナチトロ大尉(偽名・笑)から

「おおっ、今回はガンダム一色のブログですね!素晴らしい!」

とのコメントをいただきましたが、

私は、2回もサイトを沈めてしまった管理人ですよ、ナチトロ大佐

とお返ししました。


そうなんです。私は2回もサイトを沈めた管理人なんです。
さすが、ブライトスキー!(ちがうって・・・)


なお、ナチトロ大尉からは、

私は大尉です、まふ茶・ナビーユ・エリン

と、お約束通りに返していただきました。

赤いブロガーは、コメントまでさすがです!(笑)



さて。
なんで、こんなことを書いているかといいますと。

ひのきさんのところに、

「カミーユはある意味では、アムロ以上に父親を知らないようなものだから、もしカミーユが父親がわりを求めているとしたら、それはないものねだりだろうな。」


と書いてあるのを読んで。
自分が昔書いた文章を思い出したわけです。

それが、「あたたかい場所」
2年前に、Ζのテレビシリーズを見ている途中に書いた文章です。

つたない物語ですが、よろしかったら、読んでみて下さい。




あたたかい場所

 

地球に降下していたカミーユ・ビダンが、アーガマへ帰ってきた。

月面のグラナダへ行っていたファ・ユイリイも、戻ってきた。

しばらくぶりにファと会ったカミーユは、廊下でそっとファを抱き寄せた。

「しばらく・・・このままにさせておいてくれ・・・」

静かに目を閉じて抱き合う二人の後ろを、ブライト・ノア艦長は黙って通り過ぎた。

エレベータを降りようとしたエマ・シーン中尉も、二人に気が付いてエレベータの扉を閉めた。

カミーユは、ファの黒髪に顔を埋めながら、思った。

『やっと、ここへ帰ってこられた』と。

だが、帰ってきたのは「体」だけ。カミーユの「心」は、まだ地球にあった。

 

フォウ、フォウ・・・・

 

その夜、ブライトは自室で報告書に目を通していた。

控えめなノックの音がした。

「はい、どうぞ。開いているぞ」

忙しさにかまけ、背中のままで返事をした。ドアが開く音がして、誰かが部屋に入ってきた。

「艦長・・・」

その声に、

「カミーユか、どうした?」

振り返りつつ、のんきに答えたブライトは、息を呑んだ。

カミーユの顔色が良くない。

「カミーユ、どうした?! 具合が悪いのか?」

「・・・いえ」

「ハサン先生の所へ行こう。一緒に行ってやるから」

ブライトは、カミーユの肩を、ドアの外へ、医務室へ導こうと軽く押した。

この顔色の悪さは、普通じゃない。ハサン先生に見てもらった方がいい・・・

ゆらり。カミーユが、揺れた。

そして、そのまま、ブライトへと、もたれ掛かった。

「お、おい!」

カミーユの細い肩を抱いて、ブライトは問いかけた。

「カミーユ、大丈夫か?」

「ブライト艦長・・・」

「熱でもあるんじゃないのか? ハサン先生の所へ・・・」

「いえ、いいんです」

「だって、お前・・・」

言いかけるブライトを遮るかの様に、カミーユがブライトにぎゅっと抱きついた。

「お、おい。カミーユ」

驚いたブライトに、カミーユが細い声で言った。

「艦長・・・少しでいいんです。このままで、このままでいさせて下さい・・・」

ブライトの脳裏に、数時間前のカミーユとファの姿が浮かんだ。

「・・・カミーユ。俺は、ファじゃないぞ」

冗談めかして言ったブライトに、カミーユは、さっきよりも小さな声でつぶやいた。

「ファには言えないんです、ファには・・・」

 

苦しげなカミーユの声を聞き、ブライトは思った。

地球で、何か重い物を抱えてきたのか? 

まだ、17才の少年が、抱えきれない重い物を・・・・

大人の男にはほど遠い細い肩を、ブライトはぎゅっと抱き寄せた。

今だけ、今だけなら。

お前の苦しみが、これで和らぐのなら・・・

ブライトの背中に回ったカミーユの手に、力が入った。

 

しばらくして、ブライトの胸に顔を埋めていたカミーユが、その顔を上げた。

見上げるカミーユを見つめて、ブライトはため息を付いた。

熱に浮かされたような顔。

ダメだ、これじゃあ、一人にさせられない・・・

 

「カミーユ」

「はい」

「今夜は、ここにいろ」

「えっ?」

驚いた顔のカミーユに、ブライトは続けた。

「そんなに顔色の悪いヤツを一人にさせられるか。ここで寝ていいから」

「艦長・・・」

戸惑うカミーユに、ブライトは尋ねた。

「嫌か?」

「いえ・・・いえ、嫌じゃないです」

ブライトは、微笑んだ。

「じゃ、決まりだ。ここで休め。いいな」

「はい・・・」

ブライトは、クローゼットから洗い替えのパジャマを出して、カミーユに渡した。

おずおずと、カミーユはブライトのパジャマに着替えた。

大きめのパジャマを着たカミーユは、より少年っぽく見えた。

「先に寝ていていいよ」

「ブライト艦長は?」

「この報告書が終わったらな」

こくんとうなずいたカミーユに微笑みかけると、ブライトは報告書へと戻った。

 

ブライトのベッドに横になったカミーユは、ブライトの背中を眺めていた。

『艦長って、お父さんみたいだ。いや・・・お母さんかな』

くすっ。つい笑ってしまった。

その気配に、ブライトが振り返った。

「うん? 何だ?」

「いえ、なんでもありません」

カミーユの笑顔を見たブライトは、安心して報告書へと戻った。

 

ブライトを、「お父さんのよう」「お母さんのよう」と思ったカミーユだったが、それは「自分の父と母のよう」と思ったのではなかった。

あくまで、一般的な意味での、「お父さん」「お母さん」だ。

カミーユは、自分の両親に良い思いを抱いていない。

カミーユの父フランクリンも、母ヒルダも、仕事で忙しい人だった。

父が、外に愛人を持っていることに、母もカミーユも気が付いていた。

母は、父を無視するかのごとく、仕事に打ち込んだ。

そんな中で、カミーユは置いてきぼりにされた。

誰もいない家で、一人過ごすことが多かった。一人っきりの夜もあった。

 

報告書にペンを走らすブライトの背を見つめながら、カミーユは思った。

『誰かが近くにいるって、安心するんだな」と。

 

カミーユに、その「誰か」はいなかった。

本来なら、父が、母がいる場所。そこには誰もいなかった。

幼なじみのファ・ユイリイや、ファの家族はカミーユに気遣ってくれたけれど、この「喪失感」は埋められる物ではない。

 

僕も、家族や過去が欲しかったのかも知れない。

フォウ、君と同じだ・・・

 

頭が、ぼぉっとする。本当に、熱があるのかも知れない。

カミーユは、そっと目を閉じた。

 

ブライトが、報告書を仕上げて振り返ると、ベッドの中のカミーユは寝息を立てていた。

疲れているんだな・・・かわいそうに。

17才。

本来なら、学校で勉強やクラブ活動に興じ、家族の中で安穏な日々を過ごしている頃なのに、

戦争に巻き込まれ、モビルスーツに乗らされて・・・・

 

「地球で、何を抱えてきたんだ? カミーユ・・・」

ブライトは、その寝顔に そっと問いかけた。

 

パジャマに着替えたブライトは、ベッドへ入った。

ベッドが暖まっている・・・・誰かの隣で眠るなんて、久しぶりだ。

その暖かさに、ブライトは、地球の家族を思った。

最愛の人、ミライ。大切な子ども達、ハサウェイとチェーミン。

一度任務に就くと、会うこともままならない。地球と宇宙、遠く離れたままだ。

一人で子ども達を守ってくれているミライには、申し訳ないと思っている。

次に会えるのは、いつなんだろう。この戦いが終わるまでは、会えないんだろうか・・・

 

「フォ・・・フォウ・・・」

その時、隣のカミーユが、声を出した。夢を見ているんだろうか。

フォ? ファのこと? ・・・いや・・・「フォウ」と聞こえた。

ブライトは、カミーユの背中を、半身を起こして見つめた。

寝返りを打ったカミーユが、そんなブライトに無意識に抱きついてきた。

「お、おい!」

「フォ・・・」

また、「フォウ」か。 何をそんなに悩んでいるんだ、カミーユ。

無防備に眠る姿は、まだまだ子どもだ。とても、ガンダムMk-Ⅱのパイロットとは思えない。

眠っていても、なお安らぎのないカミーユに、ブライトは悲しみを覚えた。

カミーユの少年らしい体つきに、まだ5才の息子の将来を重ねてしまう。

 

俺のハサウェイも、いつかこんな深い悲しみを抱えるんだろうか・・・

 

憂いを感じたブライトは、カミーユを抱きしめた。

暖まったベッド、隣にいる誰か。

とくん とくん とくん 心臓の鼓動。

懐かしい気持ちで、年若い艦長は眠りに落ちた。

 

フォウ、フォウ、どうして?

フォウ、フォウ、何故、行くんだ?

フラッシュバックのように、たくさんのフォウ・ムラサメが浮かぶ。

出会った時のこと、甘えて寄りかかる君、コロコロと笑う姿、12時まで一緒にいられるシンデレラのようなフォウ。

たくさんのフォウを振り払うかのように、黒い巨大なガンダムが現れた。

サイコガンダム!!

フォウ、フォウ、乗るな!

フォウが身を翻す。泣いているフォウ。

フォウ、フォウ! サイコガンダムに乗るんじゃない、フォウ!!

 

「っ!」

自分の声で、目が覚めた。

「フォウ・・・・」

泣いている・・・・頬を伝う涙を拭ったカミーユは、びくっとした。

思いがけなく近い場所にあったブライトの寝顔に、驚いたのだ。

何故自分がブライトの腕の中で目覚めたのか、一瞬分からなかったカミーユだったが、すぐに思い出した。

「そっか・・・艦長が泊めてくれたんだっけ」

 

でも、なんで、僕を抱きしめてるんだ、艦長は?

腕まくらなんてしていたら、明日辛いだろうに・・・・

 

そう思いつつも、その状態が心地よくて、カミーユは腕を抜け出さなかった。

そおっと、ブライトの胸に顔を埋めた。

艦長の匂い、心臓の音。何故だろう、懐かしい・・・・

カミーユは目を閉じた。

カミーユの中に、もう泣いているフォウはいなかった。

とくん とくん とくん ブライトの鼓動をカミーユは感じる。

あたたかい気持ちになったカミーユは、眠る人にそっとつぶやいた。

 

「おとうさん・・・」

 

 




 

 
おまけ


 

翌朝のアーガマのブリッジ。

キャプテンシートのブライト艦長は、いつもに増して、苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。

「艦長、どうしたんです?」

おずおずとトーレスが尋ねた。

「ああ・・・ちょっと右腕が痛くてな。どうも、寝違えたようだ」

「そうですか、お大事に。」

艦長をねぎらうと、トーレスは隣のサエグサに、こっそりと話しかけた。

「なぁ・・・艦長さ、腕が痛いって、もしかして誰かを一晩中、腕まくらしてたんじゃないの?」

「はは・・・まさか! そんなわけないだろう」

「そうか? 艦長ならやりかねんぞ」

ブライトが、笑顔で口を挟んだ。

「聞こえているぞ、トーレス。妙な邪推をするな。俺をなんだと思ってるんだ、お前は。 策敵、怠るなよ!」

「はいはい、わかってますよ!」

 

もし、トーレスが振り返ったなら、ブライトの笑顔がこわばっていることに気が付いただろう。

けれど、策敵に戻ったトーレスは振り返らなかった。

ブライトは、ため息を付いて、心の中でつぶやいた。

 

『トーレス・・・お前、鋭いな・・・・』
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by m_n_erin | 2006-06-09 19:38 | Ζ | Comments(6)
Commented by ひのき at 2006-06-09 20:55 x
すごい! 本当にすごい!
まふ茶さんの文才とイマジネーションに感動しました。
こういうのがもっとあるなら、ぜひ読みたいです!
優しい人でなければ書けない物語ですよね。
私まであたたかい場所にいる気持ちになれました。

TBとかいろいろ、ありがとうございました。
Commented by m_n_erin at 2006-06-09 21:28
☆ひのきさん
感想&トラバ、ありがとうございました。

これは、Ζの終わりが近づくにつれ、追いつめられていくカミーユがかわいそうで、かわいそうで。
それで、せめて私のカミーユには安心して眠らせてあげたくて、艦長にご登場願いました。
ひのきさんの文章への、答えの一つになっていたらいいんですけど。
Commented by ray_ms06 at 2006-06-09 22:29
あれ?こんな話あったっけ?と途中まで思ってしまいましたよ(笑)ほっとするのときわどいのの中間ぐらいなお話で・・・でもこういう文才は凄いなぁ。俺にはこういう才能は無いから素直に尊敬します!

ブログに関してはほら、俺も最近までほったらかしでしたから(笑)まぁ今書きたいことを書けばいいんですからドンマイです!
Commented by 少尉 at 2006-06-09 22:48 x
すごく面白いです!連載してください!
つーか書籍化しちゃいましょうw
Commented by m_n_erin at 2006-06-11 22:03
☆レイ大尉
きわどいですか? ちょっと「や●い」っぽいかな・・・
全然そんな気はないんですよ、ホント!
まぁ、いろいろありまして、サイトを2回も沈めていますが、今度はそうならないよう、がんばりたいと思っています。
Commented by m_n_erin at 2006-06-11 22:06
☆少尉
読んで下さって、ありがとう。
書き貯めているもの、実はまだあります。
艦長の話ばっかりですけど(笑)
そのうち、掲載したいと思います^^


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