暗い朝、もしくは、明ける夜に

「ブライト・ノア好きに100問」という、質問集がありまして。

その中に、
「ブライトの両親は、どんな人だと思いますか?」という問いかけがあったんです。
艦長のプロフィールって、謎だらけですからね。

艦長のお父さんとお母さんって、どんな人だったんだろう?
兄弟はいたのかな?
どんな風に暮らしていたんだろう。

考えているうちに、妄想が膨らみました。
2年前に書いた小説もどきです。

相変わらずの「自分設定」
公式なバックグランドを知らずに書いています。
今読んだら、アタフタ・・・だけど、いいのっ!

よかったら、見て下さい。



暗い朝、もしくは、明ける夜に



夢を見ていた。

俺は、まだ幼い少年で、昨日スペースポートで見たシャトルのことを興奮げに話している。

上の姉が小さな弟の話にうなずきながらカップを口に運び、下の姉は決まらない髪型に文句をつける。

そして、母はサラダのボールをテーブルに置いた。

「ブライト、もういいでしょ。早くお食べなさいな」

「はい、母さん」

 

母の笑顔を確かめようとした時、不意に目が覚めた。

夢か。母さんの夢など久しぶりだ。

一番幸せだった頃かも知れないな。世界に、何の怖い物もなかった頃だ。

 

隣に眠る人を気遣いながら、広いベッドから起きあがった。

壁に掛けた軍服が目に止まり、袖を通した。

軍服を着ることは、幼い俺の憧れだった。

「父のような軍人になりたいです」 学校の作文にそう書いたもんだ。

懐かしい気分になり、枕元の本を手に取った。

そこに挟み込んだ一葉の写真を取り出し、眺めた。



俺の幸せだった家族が、そこにいる。


 

「・・・ブライト、もう起きたの?」

枕元のライトをつけたせいか、ミライが目をさまし、ベッドから身を起こした。

「ごめん、起こしてしまったね」

「まだ起きるには早い、わよね? あら、もう着替えてしまったの?」

写真を本に戻しつつ、腑に落ちない表情のミライの横に腰を下ろした。

「うん。ミライはまだ寝ていて構わないよ」

「夫より後に起きる妻がいて?」

そう言うなり、本当に起きようとする。ミライのこういうところ、古風というか、ミライらしいというか・・・

「いいよ、まだ起きる時間じゃないんだから。じゃ、俺ももう一度横になるからさ」

そう言って、上着だけ脱ぎ、ベッドに戻った。

「ちゃんと掛けておかないとしわになっちゃうわ」

脱いだ服を、ミライが起きてハンガーに掛けた。

「すまない、ミライ」

「いいえ、どういたしまして・・・・で、どうなさったの? 怖い夢でも見た?」

いたずらっぽく微笑む人に、微笑み返した。

「・・・いや、楽しい夢なんだ。でも、一番辛い夢なのかも知れないな」

「ねっ、よかったら話して」

 

そう、話そう。俺の大切な人に、俺の大切だった人の話をしよう・・・・

 

UC(宇宙世紀)0060年、地球のある幸福な家族の元に、新しい家族が加わりました。

家族たちは、男の子の誕生をさぞかし喜びました。

男の子は「輝き」を意味する名を付けられ、愛情を一身に受けて育ちました。

 

「これはあなたのお話なのね、ブライト」

「ああ、そうだよ。俺が子供の頃の話。 まだ君にきちんと話していなかっただろ?」

「お姉さんが二人いたことは聞いているわ。年が離れていたのよね」

「うん、そうだ。大きい姉は、俺が小学校の時に嫁いだよ」

 

男の子には二人の姉がいました。

姉たちと、男の子は年が離れていました。

9才離れた姉は、物静かな優しい人でした。

この姉と男の子は年が離れすぎていたため、直接遊ぶことは少なかったのです。

6才離れた下の姉にとって、男の子は「かわいいおもちゃ」でした。

小さい間は、お人形の様にかわいがりました。

人形遊びの赤ちゃん役にしたり、スカートを着せてみたり、お化粧をしたこともありました。

 

「くくっ・・・」

「・・・笑うなら、声を出せよ、ミライ」

「あなた、そんなことをされていたのね」

「うん、大きくなってから、証拠の写真を見せられたんだ。その時の俺の気持ちと言ったら!」

「ブライトって、時々女言葉になるじゃない?」

「えっ、そうか?」

「なるわよ、時々。それって、お姉さん達の影響ね」

「まあ、そうだろうな。家の中で、男は俺一人だったからな」

「あら、お父様は? そっか、軍役に着いてらっしゃたのね」

 

男の子の父は、地球連邦軍の将校でした。

巡洋艦の艦長としての任務に着いていたため、家にいないことが多かったのです。

男の子は、父親の軍服姿が大好きでした。

グレーブラウンの制服の襟元の星や、制帽に憧れました。

父親は、男の子に自分と同じ様な軍属になることを望んでいました。

跡取りとなる男の子の誕生を心底喜んでいたのです。

 

「お姉さん達を入隊させることは考えなかったのかしら?」

「上の姉は、優しすぎたんだ。軍隊なんて無理だったと思うよ。

父もそのことはわかっていたから、将校の息子と結婚させたんだ」

「じゃあ、下のお姉さんも?」

「・・・彼女のことは、また後で話すよ」

 

父親が不在でも、男の子の家は幸せでした。

優しい母と、穏やかな長姉と、元気な次姉と。

男の子は、家族の愛情を一身に受け、素直に育ちました。

時々帰る父も、優しい人でした。

 

「優しいお父様だったのね」

「それでも、何度か殴られたよ。元気すぎたからな、俺は」

「そんなブライトに会いたかったわ」

「バカ」

「ね? スラックスも脱いで下さらない? そうやって横になったら、しわになっちゃう」

「今更パジャマを着るなんて、面倒だよ」

「下着のままで構わないわ。そのかわり、ちゃんと布団の中に入って。風邪をひいたら大変よ」

「・・・わかった」

 

男の子が11才の頃、大きい姉が嫁ぎました。

家は、母と下の姉と男の子だけになりました。

そして、男の子が12才の時、初めの悲劇が起きました。

父親の乗った巡洋艦が、航海途中で爆発事故を起こし、総員諸共宇宙に消えてしまったのです。

それだけでも悲しいのに、爆発事故は父親の全面的な過失と言うことにされていたのです。

連邦軍は2階級特進どころか、官位まで剥奪し、ノア少佐の経歴は、消されてしまいました。

 

「・・・・」

「泣いているのか? ミライ」

「ごめんなさい。事故だとは聞いていたけれど、こんなことだったなんて・・・。官位の剥奪って、またどうして?」

「父が、ある軍事企業に情報をリークしていたと。それを知られたために、クルーを道連れにサラミスを爆破させたと・・・」

「そんな!・・・一体誰がそんなことを?」

「一人じゃない、数人から同じ様な情報がジャブローに届いていたらしい。

もっとも、それが信用されたのは、それがある将校候補から伝わった話だったからのようだが」

「・・・それは、真実ではないのでしょう?」

「ああ、もちろん。真実じゃない」

「そうよね・・・でも、一体誰が」

「それをジャブローに伝えたのは・・・当時は少佐だったエルラン中将だ」

「エルラン中将?! じゃあやっぱり」

「そう、父はぬれぎぬを着せられたんだ・・・」

 

まだ12才の少年に、父親のぬれぎぬをはらすことは出来ませんでした。

少年と母親と下の姉は、住んでいた家を追われました。

その家は、軍属用の家だったからです。

少年は、知らない町へと引っ越しました。

そして、2つ目の悲劇が起こりました。

長姉が、嫁ぎ先から帰されてきたのです。

 

「えっ・・・どうして?」

「言ったろ? 姉は将校の息子に嫁いだんだ。謀反人の娘を、息子の嫁にしておくはずはないだろう?」

 

親が決めた結婚でした。

それでも、1年以上の暮らしの中で愛情は生まれていました。

なのに、家に帰された長姉は涙を見せることなく、物静かに微笑んでいました。

そんな姉が、少年にはとても悲しいものに思えました。

母親にとっても、辛いことの連続でした。

それでも、母親はいつも優しく、そして強かったのです。

母親は言いました。

“ブライト、あなたは軍人になるのよ。お父様のような立派な人に。

お父様は謀反なんてしていない。それを証明してちょうだい”

 

「お母様は、お父様を信じていたのね」

「うん、そうだよ。おれたちはみんな信じていた。

この父の事件で、上の姉さんだけでなく、下の姉さんの運命も変わってしまったんだ・・・」

 

次姉は、父親の無実を晴らそうと、自分なりに調べていました。

連邦軍のことを調べるうちに、上層部の腐敗の構図に気付いた彼女は、それをレポートにして、雑誌社に持ち込みました。

雑誌社はそれを取り上げ、彼女の書いた物は、アングラで評判となりました。

次姉は、ジャーナリストとしての第一歩を歩みだしたのです。

 

「下のお姉さんはジャーナリストだったのね」

「うん。ペンネームで書いていたから、ノア家の人間だとは知られていなかったけどね。

取材で、彼女も家にいることが少なくなった。

そして、俺も士官学校に入学して寮生活になったから、家は上の姉と母だけになってしまったんだ」

「お二人じゃ寂しかったでしょうね」

「ああ・・。でも、俺は、どうしても母の願いを叶えたかったんだ。父と同じ軍人になるという夢をね。

それが俺に出来る唯一の親孝行だと思ったんだ・・・」

 

UC0079年、1月3日。

スペースコロニー、サイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対して、独立戦争を挑んできました。

男の子は、19才の青年になっていました。

青年は、士官学校に在籍していましたが、開戦に伴い、戦時特例で繰り上げ卒業しました。

優秀な成績を納めた青年は、士官候補生として、南米ジャブローでの実務に入りました。

その頃、宇宙ではジオン軍によって、史上最悪の作戦が行われようとしていました。

 

世に言う「ブリティッシュ作戦」です。

 

ジオンによって発動されたブリティッシュ作戦は、連邦軍本部ジャブローへの爆撃作戦でした。

サイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」そのものを、ジャブローに降下させようとしたのです。

ジオン軍は、コロニーの住人による反戦工作や通報をさけるため、コロニー内で毒ガスを使用し、コロニーの住人を惨殺しました。

巨大なコロニーは、月の軌道に乗り、重力に導かれて、その姿を保ったまま、大気圏に突入しました。

大気の摩擦熱でコロニーは連続的に分裂しました。

前部は沈み込み、後部は3つに分裂しました。

2つは北米大陸に落下し、1つは太平洋上に落下しました。

この落下により、オーストラリア大陸の1/3 と、北米大陸の1/4が壊滅しました。

1次被害で3億2000万人の人々が、2次被害で20億人がその犠牲となりました。

コロニーが分裂したことで、ジャブローへの直撃は、まのがれました。

しかし、人的被害はその分大きくなったのです。

開戦からたった1週間で、総人口の半数の人々を死に至らしめたのです。

 

「ブライト、お母様は確か・・・」

「うん、北米に住んでいたんだ。母も上の姉さんも、行方不明者リストに名前を連ねているよ。」

「・・・」

「俺はジャブローにいた。

もし、コロニーがジオンの計画通りジャブローに落とされていたら、あの強固な地下基地でさえ壊滅は まのがれなかっただろう。

俺も死んでいたに違いない」

「・・・・」

「それから、下の姉なんだが・・・」

「・・・ええ」

「彼女も行方不明なんだ。雑誌社宛に届いた最後のメールの発信場所は・・・アイランド・イフィッシュだった」

「アイランド・イフィッシュ!」

「ああ・・・コロニー落としで、落とされたコロニーだよ。

ジオンが毒ガスを使ったときにコロニー内にいたのなら、助かってはいないだろう。

もしかしたら、宣戦布告を知って、中立のサイド6に逃れたとも考えられるが・・・

サイド6に入国した記録がないんだ。

戦争のごたごたで、記録なんか当てにならないけどね・・・」

「ブライト・・・」

 

青年は、すべての家族をなくしてしまいました。

それでも、青年は日々の実務に追われ、悲しむことを忘れていました。

“家族など、もともとなかったと思えばいい”

そう思おうとしたのです。

 

「そんな考え方、悲しいわ。あなたはそれだけ傷ついていたのね」

「戦争中だよ。どこにでもある話だ」

 

「じゃあ、どうして今、あなたは涙を流しているの?」

 

俺は泣いているのか? 

ミライが、俺の髪をなでた。

「悲しい人。その時、そばにいたかったわ・・・」

 

「俺に、家族はいない。

母と姉をジオンに殺され、父を連邦に殺された。

あの戦争の時、俺は何も信じちゃいなかった。

例え死ぬことがあっても、それでいいと思っていたんだ」

「ブライト・・・」

「でもね、ミライ。ホワイトベースに乗って、だんだん変わっていったんだ。

クルーのみんなが、家族のように思えだしたんだ。

そう・・・アムロが素直になった頃から、かな?

あの4ヶ月間、俺にも家族がいたんだ」

「そうね、家族だったわね。アムロに、カイ、ハヤト」

「リュウ、セイラ、フラウ、オスカにマーカー、オムル・・・」

 

二人で、ホワイトベースのクルーの名をあげていく。

 

「ハワド、ジョブ・ジョン」

「サンマロ、マサキ。世話になったな」

「そうそう、カツ、レツ、キッカを忘れたらダメよ」

「バンマス、マクシミリアン・・・スレッガー」

 

俺がスレッガー中尉の名前を出すと、ミライは悲しげな笑みを浮かべた。

「そうね・・・みんな家族だったわね」

 

ミライへと、腕を伸ばした。抱き寄せて、その首筋に顔を埋めた。

「構わないか?」

「ええ」

首筋に口づけながら、パジャマのボタンをはずしていく。

 

みんな悲しみを越えて来たんだ・・・

 

窓の外が、ほの明るくなってきた。

「ミライ」

「なあに?」

「俺はいつか、連邦軍を離れるよ」

「えっ?」

「連邦上層部の腐敗は、1年戦争前と変わっちゃいない。

いや、むしろ腐敗が進んでいるように思う。

第2,第3のジオンが生まれるかも知れないのに、連邦は何も変わらない。

今のままじゃ、連邦はいつかダメになる。

もし、心底連邦が信じられなくなったら、俺は軍を離れる。

俺は、俺の信念で生きたいんだ。 

ミライ、それでも構わないか?」

 

ミライは、穏やかに微笑んでいた。

 

「あなたは、ご自分のなさりたいことをすればいいのよ。

私のことなど気にしないで。私は、いつだってあなたを信じているわ」

「ありがとう」

「ねっ、そろそろ起きないと。朝ご飯の支度をしなくちゃ」

「そうだな・・・なんか妙に疲れている気がするんだが・・・」

「もう、バカ!・・・ねっ、ブライト」

「うん?」

「私、あなたの名前、大好きよ。あなたには、その名の通り、いつだって輝いていて欲しいわ」

 

あ~、なんてかわいいんだ、君は!

思わず、毛布をはぎ取ってしまう。

 

「ブ、ブライト、ダメよ! もう起きないと!」

「何言ってるの?!  いいの、いいの! ・・・・ミライ、俺も君の名前が大好きだよ」

「もう!」

 

「輝く」「未来」が、二人の前に続いていますように!
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Commented by ひのき at 2006-06-15 23:10 x
前回にひきつづき、すごい!
なんか、最後にスレッガーの名前を出しちゃうところが、すごくブライトっぽいというか。
ブライトが少しずつ脱いでいくのにはちょっと萌えましたね~///
もっと読みたいです!
創作だけでブログやサイトを作れるのでは?
とにかく次回も楽しみにしてますね!
Commented by 少尉 at 2006-06-16 16:10 x
面白い!
ORIGINあたりに出てきそうなお話ですね!
俺も次回作を楽しみにしてま~す☆
Commented by m_n_erin at 2006-06-16 20:34
☆ひのきさん
私の艦長は、キャスバルも真っ青な過去を持っています(笑)
最後の一文が書きたくて、書いた話です。
輝く未来。ホント、素敵な名前ですよね。
Commented by m_n_erin at 2006-06-16 20:39
☆少尉
感想、ありがとうございます。
ORIGINで、御大が描いてくれたら。きゃあ、きゃあ。

「シャア・セイラ編」が始まる前に、ガンダムエースでオリジナルストーリーを募集していたんです。
ORIGINには、読者のアイデアもたくさん入っているんですよ。
by m_n_erin | 2006-06-15 14:28 | ごあいさつ | Comments(4)